来年春の県議選 楠本文郎元御坊市議が出馬表明

来年春に行われる和歌山県議選へ向け、元御坊市議で共産党県委員南地区副委員長の楠本文郎氏(63)=御坊市塩屋町南塩屋=が16日、御坊市選挙区への出馬を表明した。同選挙区は自民党現職の中村裕一氏(58)=御坊市熊野、8期=が9選を目指しており、2011年4月以来8年ぶりの選挙戦が確実となった。同選挙区出馬へ意欲を持っている現職市議もおり、状況によっては三つ巴の可能性も含んでいることから、今後の動向が注目されている。

 

 楠本氏は、御坊市島の「くすもと文郎はげます会」事務所で、共産党県委員会の下角力委員長同席のもとで記者会見した。

 

 楠本氏は御坊市議を35年務めたあと昨年の衆院選和歌山3区に立候補。3区を駆け巡る中で見えてきた課題、地元南塩屋区長として日常生活で求められる問題に直面する中で、「『政治から引退するにはまだもったいない』という言葉もたくさんいただき、自分に何ができるかを自問したとき、新たな挑戦として県議を選択するに至った」と経緯を説明。親しい人からは「3人区である日高郡選挙区から出た方がいい」「共産党でなかったら応援するのに」という声や意見もあったことを明らかにした上で「県会議員は市民と県政を結ぶパイプ役。私は63年のうち地元を離れたのはわずか4年間だけ。住民をよく知っていて、市政課題も分かっているところから挑戦するのが本来の姿。市部の方が厳しいのは分かっているが、私が党県委員会を説得したのが正直なところ」と話した。共産党からの出馬については「住民の意見を県政に反映させるのは無所属でもできるが、議会が持っているのは議決権であり、一定の政策的集団が必要。市議選のときにもこのような意見はあったが、その中で9回の選挙で看板を掛け続けてきた。政治的意見が違っても正しい要望であれば実現のために努力するのが共産党のよいところ。共産党でもかまんと思ってもらえるよう訴えていく」と党公認となる挑戦を説明した。

 

 日本の政治は大きく変わる時期を迎えているとし、スローガンは「流れを変えよう、政治を変えよう」を掲げる。具体的な政策はあらためて発表するとしながら「和歌山3区を回って見えた課題の一つが農業、漁業、林業の1次産業の振興。行政としてしっかり光を当てるよう訴えていきたい。地域経済を支えている福祉・社会保障、医療・保険分野の雇用、労働者が働きやすい環境づくりのための中小企業支援策にも力を入れて取り組んでいきたい」と力を込めた。

 

 昨年の衆院選で御坊市で5099票を獲得したことが今回の出馬へ背中を押した一つの要因ともいい、選挙戦へは「7000票が一つの目標。あと2000票、新たな支援をもらえるよう頑張りたい。不可能ではないと思っている。これからの御坊市をどうするのか、政策論争で戦いたい」と訴えた。

 

 9選を目指す現職中村県議は「選挙になれば、いままで頑張って取り組んできた政策など市民に選択してもらうチャンスをいただけることになる。人口減対策、南海地震等に備えた防災対策、大学の新設など引き続いて取り組んでいきたい」と話している。

 

 楠本氏は1954年8月、御坊市生まれ。塩屋小学校、河南中学校、日高高校、和歌山大学教育学部卒業。77年から小学校教諭を5年務めたあと、83年に御坊市議に初当選してから9期連続当選。昨年10月の衆院和歌山3区に立候補した。

 

日高新報2018年5月17日付掲載


 来年4月29日の任期満了に伴う県議選御坊市選挙区(定数1)に日本共産党公認で新人の楠本文郎・元御坊市議(63)=同市塩屋町南塩屋、党県委員会南地区副委員長=が16日、出馬を表明した。楠本氏は同市議を35年間務め、昨年10月の総選挙和歌山3区に立候補、落選したが、市内で5千票を超える得票があり「大きな挑戦になるが、当選は決して不可能じゃない。今の政治(県政)の流れを変えたい」と決意を述べた。同市選挙区は自民党現職の中村裕一県議(58)=同市熊野=が9選をめざすほか、保守系の同市議会現職の転身も取りざたされ、三つどもえの可能性もあるため、今後の動向が注目される。

 

 同市島の「くすもと文郎はげます会(大川克人代表世話人)」事務所で記者会見を行い、同席した下角力・党県委員会委員長が「党公認候補は5人目。現在の2人から5人以上の当選を目指したい。今の県議会は自民党県議団が非常に多く、横暴きわまりない。楠本氏にはそれに風穴をあけてもらいたい。昨年の総選挙で二階自民党幹事長を相手に御坊市内で5099票獲得しており、御坊市選挙区を必勝区に位置づけて頑張りたい」と話した。

 楠本氏は「今こそ『住民が主人公』となる『当たり前の政治』が求められている。総選挙で広い3区を駆けめぐる中で日本社会の典型とも言える暮らしの状況をたくさん見た。南へ行けば行くほど御坊市の10年後、20年後の姿が見え、視野が広がった。日常生活で求められている課題に直面する南塩屋区長という世話役もさせていただく中で、細やかな住民の願いをお聞きしながら広い視野で事に当たるため、今の自分にできる挑戦として県議を選択した」と述べた。

 御坊市選挙区を選んだことには「親しい人から『日高郡から出た方が当選の確率は上がる』という意見もいただいたが、63年間の人生で御坊市を離れたのは4年間だけ。付き合いが深く、市政の課題も分かっている御坊市ではなく、日高郡から出たら、これまで自分は何をやってきたか分からなくなる」。総選挙での同市内得票について「かつて共産党公認が獲ったことのない多大な得票。(今回の出馬に)影響したのは間違いない」と述べた。

 共産党公認には「共産党でなかったら応援する、と言う意見もいただいたが、35年間掲げてきた看板を外せば、今までの政治活動が間違っていたという誤解を与えかねない。共産党が嫌いな人でも政策で一致できれば一緒にやれると思っている。政治的に意見が違っても正しい要望であればその実現に努力するのが共産党」。目標は7千票(投票率70%想定)とし「総選挙の得票に、あと2千票、応援してもらうのは決して不可能じゃない」とし、現職に対しては「これまで本気の選挙はやっていないと思う。お互いに本気の選挙を戦い、しっかり政策論争したい」と述べた。

 政策は(1)農林水産業の第一次産業が県政、御坊日高地域の最優先課題。この地域のポテンシャルを活かした取り組みが必要(2)地方の地域経済を支えている中心は福祉・社会保障、医療・保健分野の雇用。ここに光を当てる政治に取り組みたい(3)憲法と法律で保障されている労働環境が適応されていない。当たり前に年休を取れる職場、インフルエンザで休んでも賃金がカットされない労働環境にしたい-を挙げ、今後、住民の声を聞きながら政策を精査、整理するとした。

 

紀州新聞 2018年5月17日付掲載